この記事の概要
「3Dプリンター出力品って何?」
「普通のガレージキットとどう違うの?」
と疑問に思う人は多いと思います。
中には「安っぽい感じ」「作るのが難しそう」「品質が悪そう」
という誤解や悪い印象を抱いている方もいると思います。
結論を言うと3Dプリンター出力品は総じて
「品質が良く」
「作りやすい」
ガレージキットです。
もちろん品質や作りやすさはキットの構造によって異なりますが、
作りやすく配慮された出力品キットは従来のガレージキットよりも作りやすい
と結論付けていいと思います。
この記事では
「3Dプリンター出力品の基礎知識」及び
「3Dプリンター出力品の塗装・組み立て方」を解説します。
目次
- 3Dプリンター出力品とは
- 仮組み、組み立て
- 表面処理
- 塗装
- まとめ
3Dプリンター出力品とは
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3Dプリンター出力品とは
「3Dプリンターで出力したパーツを直接塗装し、完成させるガレージキット」です。
従来型のガレージキットは
「パテや3Dプリンターで作った原型をシリコン型で複製し、複製したパーツを塗装し、組み立てるガレージキット」です。(以下「レジンキャストキット」と呼びます)
結論から言うと3Dプリンター出力品もレジンキャストキットも塗装・組み立て工程に大きな差はありません。
とはいえ知っておいた方がいい相違点や共通点、注意点も少なからずありますので詳しく解説します。
仮組み・組み立て
仮組みとは塗装を始める前にパーツの合わせやゆがみをチェックしたり金属線でパーツを補強したりして組み立ての予行演習を行う工程です。
手順としては3Dプリンター出力品もレジンキャストキットと全く同じです。
今回は当店オリジナルガレージキット
「鮎川ひより デフォルメVer.」を使用して作業の解説をします。
キャラクターデザイン:都嵩(つかさ)様
①ドリルで穴をあける
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パーツの勘合部に小さく印がつけてありますので印の位置にまっすぐ0.5mmのドリルで穴をあけます。ドリル刃を折らないよう慎重に作業します。
②真鍮線を差し込む
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両方のパーツに穴をあけたら片方に0.5mmの真鍮線を差し込んで瞬間接着剤で固定します。
うまく刺さらない場合はニッパーではさんで奥まで差し込みましょう。
今回軸には全て0.5mmの真鍮線を使用しています。強度がもっと欲しいと感じたら1mmの真鍮線かアルミ線を使ってください。
③組み立てる
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真鍮線を差し込んだら パーツを合体させて合わせを確認します。うまく合わない場合は真鍮線をまげて調整します。
④髪の毛・顔・腕を着脱可能にする
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「鮎川ひより デフォルメVer.」は顔パーツと腕パーツを差し替えることができます。
これらのパーツは接着せずに差し込むだけにしておけばいつでもパーツを交換できます。
おさげも腕パーツによって回転させる必要があるためパーツ同士を接着せず差し込むだけにしておきます。接着するよりカンタンです。
⑤アクリルベースに固定する
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キット付属のアクリルベースと足の裏に穴をあけ、金属線で固定します。
強度を保つために金属線は1mmのものがおすすめです。真鍮・アルミどちらでもOKです。
両足に軸をさすのは位置合わせが少し難しいので右足だけで大丈夫です。
⑥出来上がり!
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これで仮組みは完了です。塗装後の組み立ても軸を差し込むだけでOKです。強度を上げたい場合は瞬間接着剤やシアノンで接着できます。
【仮組み・組み立て まとめ】
使用する道具や材料はレジンキャストキットを作るときと全く同じです。レジンキャストキットに比べてやや穴が掘りづらい感触がありますが問題なく穴あけ・組み立てできます。
表面処理
表面処理とはパーツの余分な部分をヤスリで削り落としたり表面を磨いたりしてパーツを塗装に適した状態にする工程です。
作業内容や使用する道具はレジンキャストキットとほとんど変わりません。
【サポート材とは?】
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サポート材とは3Dプリントする際にできる足場のようなものでプラモデルでいうところのランナーにあたります。「鮎川ひより」はサポート材を除去してありますがニキビのような跡がたくさん残っていますのでスポンジヤスリなどで削り落としてきれいにします。
【積層痕とは?】
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積層痕とは3Dプリントする際パーツに発生する地層のようなシマ模様です。
光造形3Dプリンタ-は0.05mm以下の薄いレジンの層を少しずつ重ね合わせて形を作るためミルフィーユの断面のような跡ができます。肉眼ではほとんど見えないのですが触ると国語辞典の側面のような手触りがするため気になる場合はヤスリで磨き落としたりサーフェイサーで埋めたりします。
①サポート材跡を消そう
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②積層痕を消してみよう
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積層痕は目立たないため無理に消す必要はありません。触ってみて気になるところだけ320番~600番くらいのスポンジヤスリでサッと磨けば十分です。「完全に積層痕を消してツルツルにしたい!」というこだわり派の方は神ヤス!の240番からスタートしてパーツの隅々まで磨いてみましょう。
表面処理のFAQ
【離型剤は落とさなくていいの?】
離型剤とはシリコン型からレジンキャストをはがしやすくするための油です。
3Dプリンター出力品には離型剤を使っていませんので離型剤落としは不要です。
【パーティングラインはないの?】
パーティングラインはシリコン型の合わせ目ですので型を使わない3Dプリンター出力品にはありません。そのため髪の毛など複雑な形のパーツを表面処理するのがとても楽です。
【気泡はないの?】
気泡はまれにありますがレジンキャストキットに比べるとごく少量です。気泡というよりも印刷不良で小さな穴があくことがあるようです。穴を見つけた場合はパテで埋めて修復するか、目立たなければスルーしてしまいましょう。
【サーフェイサーを吹かなくていいの?】
サーフェイサーはパテを液状にしたものでパーツの細かな傷を埋めたり塗料の食いつきをよくするために使われる下地塗料です。積層痕やヤスリ傷を埋めて仕上がりにこだわりたい場合はサーフェイサーを吹いて表面を整えましょう。
しかし「塗料の食いつきをよくする」という目的で使用する場合は不要です。レジンの種類にもよるかもしれませんが3Dプリンター出力品は異常に塗料の食いつきがいいのでパーツに直接塗料を吹き付けても問題ありません(積層痕が残っていても消してあっても食いつき良好です)。
【積層痕はホントに消さなくていいの?】
積層痕は消した方が仕上がりはよくなりますが無理に消さなくても目立ちません。ただし以下の場合はしっかりと消した方がよいです。
- 「ピカピカの光沢仕上げにしたいとき」
- 「アイペイントをするとき」
光沢仕上げにする場合、積層痕が残っているときれいな光沢になりません。
筆でアイペイントをするときも、積層痕が残っていると塗料が積層痕に入り込んできれいに描きづらくなりますのでしっかり磨いておきましょう。瞳デカールを使用する場合は無理に消す必要はありません。
【サポート材の跡が見つけにくい・・・】
サポート材の跡が見つけにくいときはサーフェイサーや塗料を吹き付けると見えやすくなります。跡が残っていたらその部分だけ磨きなおしましょう。また、UVライトでパーツを照らすと表面の状態が見やすくなります。
【表面処理 まとめ】
表面処理はパーティングラインがない分3Dプリンター出力品の方が簡単と感じます。
シリコン型複製で発生するディティールの潰れやパーツ表面の波打ちもなく、積層痕も目立たないためサッと磨いて塗装に進むことができます。
塗装
塗装の要領はレジンキャストキットと全く同じです。
エアブラシ・缶スプレー・筆、いずれを使っても問題なく塗装できますのでここでは手順ではなくレジンキットとの共通点や3Dプリンター出力品ならではの特性を解説します。
【塗料の食いつきがいい】
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前述のとおり塗料の食いつきがとてもよく、爪でひっかいてもはがれないのでマスキングテープをはがしたときに塗装がはがれる事故はほとんどないと思います。
【有機溶剤に長時間浸すのはNG】
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塗装をやり直すときにパーツを薄め液やツールウォッシュなどの有機溶剤に長時間浸すのはNGです。レジンは溶剤に溶けないので一見何ともないように見えますが、パーツの内部に溶剤が浸透するとある日突然ひび割れが起きる可能性があるそうです。
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SK本舗さんに確認したところ塗装をやり直すときは溶剤を含ませたメラミンスポンジなどでふき取り、できるだけ溶剤がパーツに浸透しない方法がベターとのことです。
【アイペイントするときに積層痕が残っていると汚れやすくなる】
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表面処理の章での解説と重複しますがアイペイントをする場合は積層痕をきれいに消した方が良いです。アイペイントをするときは薄め液に浸した筆を使って線を修正するのですが、その際に積層痕の溝に塗料が入り込んで汚れが広がってしまいます。アイペイントする際はしっかりと積層痕を消し、クリアーで保護してから作業するとうまくいきます。デカールを使用する場合は必要ありません。
まとめ
長年ガレージキットを作ってきた印象としては3Dプリンター出力品はとても作りやすく、ガレージキット初心者の方にもおススメできます。
使用する道具や塗料もレジンキャストキットやプラモデルと同じものを使えますので気に入ったキットがあればぜひチャレンジしてみてください。当店BOOTHにも3Dプリンター出力品を販売していますので興味がある方はのぞいてみてください。
下記記事にて塗装レシピを公開中です。
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